情報セキュリティと情報倫理(’18)【情報 専門科目】:シラバス概要
■ 講座情報
情報セキュリティと情報倫理(’18)
Cyber Security and Ethics ('18)
【主任講師】
山田 恒夫(放送大学教授)
、
辰己 丈夫(放送大学教授)
【教材・資料】
・インターネット視聴
■ 講義概要
情報化は社会の様々な分野に浸透し、
現代社会を特徴づけるに至っている。
多くの福利を人類社会にもたらす一方、
格差を助長したり犯罪の手段になるなど、
「影」の部分への対応が日々必要になっている。
また、情報化が広範に、そして基幹的な部分に拡大するほど、
それが機能しなくなった場合のリスク管理は不可欠となる。
そして、情報技術と情報リテラシーの高度化にともない、
ユーザひとりひとりが被害者にも、
そして意図せず加害者になる可能性も増している。
本科目では、情報セキュリティと情報倫理の問題を、
システムの開発運用およびわれわれの利活用の2つの観点から解説し、
その全体像を明らかにする。
【授業の目標】
・情報セキュリティのシステム的・運用的な課題を理解する。
・情報リテラシー(フルーエンシー)教育における情報倫理の課題を理解する。
・社会における一利用者として必要な、情報倫理を身につける。
・本分野は、技術革新の著しい分野であり、短期間で変化する。
このため、最新の動向を、
継続的に学習できるためのコンピテンシー(能力)を身につける。
【講義項目】
- 第1回 情報化社会における光と影2018
- 第2回 サイバー犯罪とマルウェア
- 第3回 ネットトラブルの諸相と対策
- 第4回 情報メディアがもたらすもの
- 第5回 子どもの発達と情報メディアの使用の問題
- 第6回 初等中等教育における情報倫理教育
- 第7回 高等教育・生涯学習における情報倫理教育
- 第8回 個人の行動データとプライバシー
- 第9回 情報社会の法
- 第10回 情報社会における倫理
- 第11回 情報セキュリティの基盤技術「暗号」
- 第12回 暗号と認証を支える制度
- 第13回 情報システムと管理、情報セキュリティポリシーと事件
- 第14回 技術者倫理と情報セキュリティ人材育成
- 第15回 まとめ
■ 講義内容
各講義回の概要とキーワード
第1回 情報化社会における光と影2018
高度情報化社会の進展とともに、情報セキュリティと情報倫理に関して、
どのような問題が生じているか、概観を得る。
こうした現象を理解するための基本的な概念と事例を学ぶ。
本科目の構成および発展学習の指針を知る。
■ 【キーワード】
情報化社会、情報セキュリティ、情報倫理、リスク、脅威、脆弱性、
情報セキュリティマネジメントシステム、情報モラル教育、ハッカー、
パーソナルデータ、IoT、本科目の学び方
第2回 サイバー犯罪とマルウェア
インターネットの一般利用者の立場に立って、サイバー犯罪とは何かを学ぶ。
次にそれらの犯罪から身を守るために、マルウェアの種類や感染経路を学習し、
パソコンやネットワークを利用・管理する際の注意点について考える。
■ 【キーワード】
不正アクセス、ネット詐欺、コンピュータウィルス、マルウェア、パソコン管理
第3回 ネットトラブルの諸相と対策
この回で紹介するネットトラブルは、青少年が被害者や加害者になることが多く、
情報社会が抱えた大きな問題といえる。
インターネットの利用者間で生じる様々なトラブルについて、
事例を示しながら、問題解決のために、
その社会的背景と問題の所在について考える。
■ 【キーワード】
ネットトラブル、ネットワーク利用犯罪、出会い系サイト、ネット犯行予告、
ネットいじめ、セクスティング、炎上
第4回 情報メディアがもたらすもの
マクルーハンは、メディアが伝える情報よりも
メディアそのものから受ける影響の方が大きいことを指摘した。
インターネットやモバイル端末などの情報メディアの使用によって、
人々がおかしな行動をするようになったと指摘する研究者もいる。
この回では、情報メディアの8つの特性について考察しながら、
情報メディアの人に対する影響について考える。
■ 【キーワード】
メディア論、情報メディア、8つの特性、匿名性、個人性
第5回 子どもの発達と情報メディアの使用の問題
インターネットには高い匿名性があり、それを理解して適切に利用するには、
豊かな人生経験に裏付けられた社会性が必要である。
また、インターネットを利用する際に用いるモバイル端末には高い個人性があり、
過ちを犯したらそれを償うことのできる責任能力が求められる。
この回では、子どもの社会性と責任能力がどう発達するかという視点で、
子どもによる情報メディアの使用の問題について考える。
■ 【キーワード】
情報メディア、匿名性、個人性、子ども、社会性、責任能力
第6回 初等中等教育における情報倫理教育
初等中等教育における情報倫理教育は、情報倫理学を学ぶのではなく、
情報社会で適正な活動を行うための基になる考え方と態度を育成する
情報モラル教育として位置づけられている。
インターネットを適正に利用するには、情報モラルだけでなく、
責任能力と社会性も必要であり、
子どもの場合はそれらの発達過程を充分に考慮した上で、
情報モラル教育の内容と方法を考える必要があることを学ぶ。
■ 【キーワード】
初等中等教育、子ども、社会性、責任能力、情報モラル、使わせ方の4段階
第7回 高等教育・生涯学習における情報倫理教育
初等中等教育における情報教育の普及によって、
若い世代では問題が高度化する一方、
高等教育以降の情報教育のあり方が問われている。
教育の国際化にともない多様な留学生に対する教育も必要になっている。
海外の状況も俯瞰しつつ、
高等教育・生涯学習における情報セキュリティおよび情報倫理の教育について学ぶ。
■ 【キーワード】
高等教育、生涯学習、情報倫理教育、情報セキュリティ教育、消費者教育、
教育の国際化、留学生教育
第8回 個人の行動データとプライバシー
情報機器や情報サービスが普及してきた現在、
私達の行動の多くは、これらをなくしては成り立たなくなった。
その結果、私達の行動はデータとして記録されるようになった。
この回では、どのような方法で、どのようなデータを取得できるのか、
そして、どのようにして活用できるのかについて学ぶ。
■ 【キーワード】
個人情報、行動追跡、モノのインターネット、ビッグデータ、
プライバシー
第9回 情報社会の法
情報社会に関わる法律には、様々なものがあるが、
そのなかでも、著作権法に代表される知的財産に係る法令と、
個人情報に関する法令について、その成り立ち、目的、内容を学ぶ。
第10回 情報社会における倫理
情報社会における様々な法やルールの成立過程を見ると、
その前に、「指針の空白」と呼ばれる期間がある。
これは、新しい技術を応用したり、
社会的ニーズに基づいたサービスが始まっても、
社会規範が追いついていないときに生じる状態である。
この回では、その際に参照される倫理や道徳観について述べる。
■ 【キーワード】
規範倫理、黄金律、コールバーグの道徳性発達6段階、
ジレンマ、指針の空白
第11回 情報セキュリティの基盤技術「暗号」
情報セキュリティの基盤技術としての暗号について学ぶ。
古典暗号と現代暗号の違い、現代暗号の標準化プロセス、
暗号の危殆化、共通鍵暗号と公開鍵暗号について学ぶ。
■ 【キーワード】
現代暗号、暗号の危殆化、暗号の標準化、共通鍵暗号、公開鍵暗号
第12回 暗号と認証を支える制度
電子署名、暗号における鍵管理、ID管理、パスワード、
生体認証について学ぶ。
また公開鍵認証基盤について学ぶ。
■ 【キーワード】
ID、パスワード、生体認証、PKI、SSL/TLS
第13回 情報システムと管理、情報セキュリティポリシーと事件
情報セキュリティポリシーの策定や、情報セキュリティ管理者の配置など、
組織としての対応、セキュリティ評価、リスクマネジメントについて
解説する。
また、情報セキュリティに関する事件・事故を例に考察する。
■ 【キーワード】
情報セキュリティポリシー、リスクマネジメント、
情報セキュリティ教育、危殆化
第14回 技術者倫理と情報セキュリティ人材育成
技術者として倫理的な考察が必要となったとき
どのような段階を踏んで考えればよいか、内部告発の問題点は何か、
倫理綱領には何が定められているかを学ぶ。
これらを踏まえ、情報通信技術に関わるいくつかの問題を見ることで、
技術者としてのアプローチ方法を考える。
最後に、情報セキュリティ人材育成の動向を見る。
【キーワード】
■ 【キーワード】
技術者倫理、内部告発、情報セキュリティ人材育成
第15回 まとめ
今後の情報通信技術の発展を予測し、人類社会の近未来を左右しかねない、
社会的現象を学びながら、今後の学問分野としての展望と、
継続学習のポイントを考察する。
情報通信技術の将来を占うことは大変困難なことであるが、
近未来の情報セキュリティや情報倫理の分野において顕著となるであろう
課題を検討する。
【キーワード】
■ 【キーワード】
ビッグデータ、プライバシー、個人情報保護、パーソナルデータ、
批判的公共圏、人工知能、ロボット、IoT、インターネット依存症、
ネットいじめ