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数学の歴史(’19)【自然と環境 専門科目】:シラバス概要

■ 講座情報

 数学の歴史(’19)
 History of Mathematics ('19)

【主任講師】

 三浦 伸夫(神戸大学名誉教授)

【教材・資料】
 ・インターネット視聴


■ 講義概要

 数学の歴史を、
 西欧のみならずアラビア世界や日本など非西欧世界も
 視野に入れて講義する。
 その際、数学の中身はもちろん発想の源泉や理論を、
 受容した社会的・文化的背景なども追いながら講じていく。


 【授業の目標】

 文化における数学の歴史的具体相を見ることによって、
 数学が孤立した学問ではなく、様々な要因のもとで展開し、
 また多くの 学問領域に影響を与えたことを学ぶ。

 さらに高校まで学んできた数学がいったいどのように成立したのか、
 その背景を知り、数学が本来持つ多様性を再発見する。

 そして今日私たちが抱く数学のイメージを歴史を通して
 根本的に再検討していく。


 【履修上の留意点】

 従来の数学史ではあまり取りあげることのなかった題材、
 つまりアラビアや西洋中世・ルネサンスの数学、
 女性と数学などにも言及するので、
 数学の枠をこえて広く学問一般の歴史に関心のある学生の受講を期待する。
 なお前提知識としては、
 世界史と微積分学のごく初歩の知識があれば十分である。


 【講義項目】


■ 講義内容

 各講義回の概要とキーワード

第1回 古代エジプトの数学

 導入として数学史とは何かを説明する。
 古代エジプトには数学という単語はない。
 しかしそこには他の初期文明同様具体的計算例からなる
 数学テクストが存在していた。
 そこに見える計算法を紹介する。
 また誰がどのような目的で計算したかという、
 文化的社会的背景にも注目する。

■ 【キーワード】
 数学史とは、ヒエログリフ、単位分数、リンド・パピルス

第2回 古代ギリシャの数学

 古代ギリシャにおける数学の発生と展開を歴史資料から概観し、
 古代ギリシャ数学の特徴を明らかにする。
 その後アルキメデスの計算法について検討する。
 さらに古代数学のその後の推移にも言及する。

■ 【キーワード】
 ピュタゴラス、マテーマティカ、アルキメデス、発見の方法

第3回 エウクレイデス『原論』と論証数学

 論証数学のモデルであるエウクレイデス『原論』を取りあげ、
 古代ギリシャにおける論証数学の成立と展開について言及する。
 そして『原論』の内容と構造を具体的に紹介し、
 数学における証明の意味について考える。

■ 【キーワード】
 エウクレイデス『原論』、論証数学、比例論、証明

第4回 アラビア数学の成立と展開

 アラビア数学の成立とその展開を、
 文化的背景を視野に入れながら述べていく。
 またインド・アラビア式計算法やゼロの起源と特徴を解説し、
 それらを用いた具体的計算法を紹介する。

■ 【キーワード】
 アラビア数字、ゼロの概念、位取り記数法、アルゴリズム

第5回 アラビアの代数学

 アラビア数学の中でもっとも発達した分野のひとつである
 代数学を取りあげ、その成立から高度に展開するまでを概観する。
 2次方程式の代数的解法、3次方程式の幾何学的解法にも言及し、
 その中で数概念が変化していった経緯を見ていく。

■ 【キーワード】
 ジャブルの学、フワーリズミー、図解、オマル・ハイヤーム

第6回 中世西洋の数学

 12世紀にアラビアから西洋中世に数学が伝播する様子を紹介し、
 その数学が今度はいかに中世大学で受容され展開していくかを論じていく。
 また中世思想の中で、数学はどのような位置であるかを見ていく。

■ 【キーワード】
12世紀ルネサンス、中世大学、自由七科、無限論

第7回 中世算法学派

 13世紀から15世紀にかけて、大学の外にあっては、
 商人たちが具体的実用的計算法を展開していた。
 それを「算法学派」ととらえ、
 その数学の特徴を見ていく。
 そこでは記号法が誕生し、様々な計算法が生み出されたことを学ぶ。

■ 【キーワード】
 フィボナッチ、記号法、算法学校、コスの技法

第8回 イタリアの3次方程式

 ルネサンス時代のイタリアのカルダーノなどによる
 3次方程式の代数的解法を紹介する。
 誰が最初に発見したのかという、発見を巡る優先権問題について考える。

■ 【キーワード】
 3次方程式解法、優先権問題、数学試合、『アルス・マグナ

第9回 ルネサンスの数学

 ルネサンスにおける古代ギリシャ数学の復興を概説し、
 当時の人文主義者たちの数学観を考える。
 さらに数学の実用性と新たな応用の具体的有り様を、
 計算術師や画家たちの活動を通して見ていく。

■ 【キーワード】
 数学讃歌、デューラー、計算術師、射影法

第10回 対数から積分法へ

 ネイピアとビュルギによる対数の発見と展開を、
 両者の置かれた社会的位置も視野に含めて比較検討する。
 さらに対数が単なる計算法から出発し、
 後に解析学へと発展していく様子を見る。

■ 【キーワード】
 三角法、対数表、ネイピア、ビュルギ

第11回 デカルトの時代の数学

 17世紀科学革命期における数学の役割を概観する。
 そしてデカルト幾何学』の成立と、その後の影響を見る。
 また接線法や求長法を理解し、微積分学成立前夜の様子を見る。

■ 【キーワード】
 科学革命、デカルト幾何学』、求長法、接線法

第12回 ニュートン

 ニュートンの若き時代の数学的アイデアの源泉と、
 その展開を検討する。
 ニュートンの数学観にも触れ、
 主著『プリンキピア』の数学史上の位置付けを確認し、
 英国におけるニュートン数学の受容を考える。

■ 【キーワード】
 流率法、『プリンキピア』、大学教授ニュートンニュートン主義

第13回 ライプニッツ

 ライプニッツ微積分学の誕生とその特徴を見ていく。
 同時に、ニュートン微積分学と比較検討する。
 その際、両者の間の微積分学優先権論争にも言及する。
 さらに当時の微積分学の批判者たちの意見も視野に入れながら、
 微積分学が徐々に認知されていく様子を見ていく。

■ 【キーワード】
 無限小解析、優先権論争、微積分学の批判者たち、学術団体

第14回 18世紀英国における数学の大衆化

 18世紀英国では、アマチュアの数学愛好家がたくさん生まれた。
 彼らの数学の特徴と役割を、
 数学器具や数学教育に言及しながら明らかにする。
 そして当時少なからずの女性が数学に関心をもっており、
 その要因を具体的に見ていく。

■ 【キーワード】
 数学愛好家、数学器具、数学と女性、数学と教育

第15回 和算

 日本の伝統数学である和算の成立と展開を紹介する。
 数学内容というよりは、
 むしろ文化や社会の中で和算がどのように展開していったかに重点を置く。
 また和算と西洋数学との比較において、
 どのように異なるのかを考え、西洋数学理解の一助とする。

■ 【キーワード】
 算額、傍書法、『塵劫記』、洋算