現代経済学(’19):シラバス概要
■ 講座情報
現代経済学(’19)
Contemporary Economics ('19)
【主任講師】
依田 高典(京都大学大学院教授)
【教材・資料】
・インターネット視聴
■ 講義概要
現代の経済学の内容と歴史を
アルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン国立銀行賞(いわゆるノーベル経済学賞)の歴史を
振り返る形で概観していく。
ノーベル経済学賞は、1968年にスウェーデン国立銀行が設立300周年祝賀の一環として、
ノーベル財団に働きかけ、設立された賞である。
スウェーデン王立科学アカデミーにより選考され、ノーベル財団によって認定される。
ノーベル経済学を振り返れば、現代の経済学の色々な顔が見えてくるはずである。
【授業の目標】
経済学の理論の細部には立ち入らず、
ノーベル経済学賞受賞者の生い立ちと研究業績の現代社会的意義について、
分かりやすく解説していきたい。
【講義項目】
- 第1回 ノーベル経済学賞の誕生 フリッシュ/サミュエルソン
- 第2回 ミクロ経済学の新展開 ヒックス/アロー/ナッシュ
- 第3回 マクロ経済学の新展開 ソロー/ルーカス/プレスコット
- 第4回 計量経済学の説明する力 クライン/ヘックマン/シムズ
- 第5回 シカゴ学派の反ケインズ革命 フリードマン/スティグラー/ベッカー
- 第6回 金融経済学の功罪 トービン/マーコヴィッツ/ショールズ
- 第7回 国際経済学の巨星たち オリーン/マンデル/クルーグマン
- 第8回 情報経済学の説明する力 アカロフ/スティグリッツ/ティロール
- 第9回 市場と組織の経済学のはざま コース/ウィリアムソン/ハート
- 第10回 社会経済学が見据える射程 ミュルダール/ハイエク/セン
- 第11回 歴史と政治の経済学の交差点 ノース/シェリング/ディートン
- 第12回 市場を設計する経済学 スミス/ヴィックレー/ロス
- 第13回 行動経済学の下克上 サイモン/カーネマン/セイラー
- 第14回 経済学の未来を担う大器 クラーク賞の受賞者達
- 第15回 ノーベル経済学賞の忘れもの ハロッド/森嶋通夫
■ 講義内容
各講義回の概要とキーワード
第1回 ノーベル経済学賞の誕生
・ラグナル・アントン・キティル・フリッシュ(受賞 1969年)
受賞理由 経済過程の動学分析への貢献
・ポール・サミュエルソン(受賞 1970年)
受賞理由 静学的および動学的経済理論への貢献
■ 【キーワード】
ノーベル経済学賞、計量経済学、数理経済学
第2回 ミクロ経済学の新展開
・ジョン・R・ヒックス(受賞 1972年)
受賞理由 一般均衡理論および社会厚生理論への貢献
・ケネス・J・アロー(受賞 1972年)
受賞理由 一般均衡理論および社会厚生理論への貢献
・ジョン・F・ナッシュ・Jr.(受賞 1994年)
受賞理由 非協力ゲームの均衡の分析への貢献
第3回 マクロ経済学の新展開
・ロバート・M・ソロー(受賞 1987年)
受賞理由 経済成長理論への貢献
・ロバート・E・ルーカス・Jr.(受賞 1995年)
受賞理由 合理的期待形成仮説への貢献
・エドワード・C・プレスコット(受賞 2004年)
受賞理由 リアル・ビジネス・サイクル理論への貢献
■ 【キーワード】
経済成長理論、合理的期待形成仮説、リアル・ビジネス・サイクル理論
第4回 計量経済学の説明する力
・ローレンス・R・クライン(受賞 1980年)
受賞理由 景気変動・経済政策の経済モデルへの貢献
・ジェームズ・J・ヘックマン(受賞 2000年)
受賞理由 ミクロ計量経済学への貢献
・クリストファー・A・シムズ(受賞 2011年)
受賞理由 マクロ計量経済学への貢献
■ 【キーワード】
マクロ計量経済学、ミクロ計量経済学、ベクトル自己回帰モデル
第5回 シカゴ学派の反ケインズ革命
・ミルトン・フリードマン(受賞 1976年)
受賞理由 消費分析・金融史・金融理論と貨幣政策への貢献
・ジョージ・J・スティグラー(受賞 1982年)
受賞理由 産業構造・市場の役割、規制の原因と影響への貢献
・ゲーリー・S・ベッカー(受賞 1992年)
受賞理由 広範な人間行動と相互作用へのミクロ経済分析への貢献
第6回 金融経済学の功罪
・ジェームズ・トービン(受賞 1981年)
受賞理由 金融市場と支出・雇用・生産・価格の関連への貢献
・ハリー・M・マーコヴィッツ(受賞 1990年)
受賞理由 資産形成の安全性の理論への貢献
・マイロン・S・ショールズ(受賞 1997年)
受賞理由 金融派生商品(デリバティブ)価格決定への貢献
■ 【キーワード】
ファイナンス理論、ポートフォリオ理論、金融工学
第7回 国際経済学の巨星たち
・ベルティル・オリーン(受賞 1977年)
受賞理由 国際貿易および資本移動の理論への貢献
・ロバート・A・マンデル(受賞 1999年)
受賞理由 通貨体制の金融・財政政策、最適通貨圏への貢献
・ポール・クルーグマン(受賞 2008年)
受賞理由 貿易パターンと経済活動の立地の分析への貢献
■ 【キーワード】
ヘクシャー・オリーン定理、マンデル・フレミング・モデル、空間経済学
第8回 情報経済学の説明する力
・ジョージ・A・アカロフ(受賞 2001年)
受賞理由 情報非対称性のある市場の分析への貢献
・ヨゼフ・E・スティグリッツ(受賞 2001年)
受賞理由 情報非対称性のある市場の分析への貢献
・ジャン・ティロール(受賞 2014年)
受賞理由 市場支配力と規制の分析への貢献
■ 【キーワード】
アカロフのレモン、アドバース・セレクション、モラル・ハザード
第9回 市場と組織の経済学のはざま
・ロナルド・H・コース(受賞 1991年)
受賞理由 取引費用と財産権の発見と明確化への貢献
・オリバー・E・ウィリアムソン(受賞 2009年)
受賞理由 経済的統治に関する分析への貢献
・オリバー・ハート(受賞 1998年)
受賞理由 契約理論への貢献
第10回 社会経済学が見据える射程
・グンナー・ミュルダール(受賞 1974年)
受賞理由 貨幣理論・経済変動理論と経済・社会・組織の相互依存性分析への貢献
・フリードリヒ・アウグスト・フォン・ハイエク(受賞 1974年)
受賞理由 貨幣理論・経済変動理論と経済・社会・組織の相互依存性分析への貢献
・アマルティア・セン(受賞 1998年)
受賞理由 所得分配の不平等の理論、貧困・飢餓の研究への貢献
■ 【キーワード】
累積的因果関係論、オーストリア学派、経済倫理学
第11回 歴史と政治の経済学の交差点
・ダグラス・C・ノース(受賞 1993年)
受賞理由 経済史の経済理論や数量分析への貢献
・トーマス・C・シェリング(受賞 2005年)
受賞理由 ゲーム理論における対立と協力の理解への貢献
・アンガス・ディートン(受賞 2015年)
受賞理由 消費・貧困・福祉の分析への貢献
■ 【キーワード】
クリオメトリクス、フォーカルポイント、ディートンのパラドックス
第12回 市場を設計する経済学
・ヴァーノン・L・スミス(受賞 2002年)
受賞理由 行動経済学と実験経済学への貢献
・ウィリアム・S・ヴィックレー(受賞 1996年)
受賞理由 情報非対称性下の経済的誘因への貢献
・アルヴィン・E・ロス(受賞 2012年)
受賞理由 安定配分の理論と市場設計の実践への貢献
■ 【キーワード】
実験経済学、オークション、マッチング
第13回 行動経済学の下克上
・ハーバート・A・サイモン(受賞 1978年)
受賞理由 経済組織内部の意思決定プロセスへの貢献
・ダニエル・カーネマン(受賞 2002年)
受賞理由 行動経済学と実験経済学への貢献
・リチャード・H・セイラー(受賞 2017年)
受賞理由 行動経済学への功績
■ 【キーワード】
限定合理性、プロスペクト理論、ナッジ
第14回 経済学の未来を担う大器
クラーク賞を受賞した経済学者と研究分野
・デヴィッド・カード
研究分野 労働経済学
・スティーブン・レヴィット
研究分野 社会経済学
・マシュー・ラビン
研究分野 行動経済学
・エスター・デュフロ
研究分野 開発経済学
・ラジ・チェティ
研究分野 公共経済学
・マシュー・ゲンツコウ
研究分野 産業経済学
■ 【キーワード】
実証経済学、構造推定、フィールド実験
第15回 ノーベル経済学賞の忘れもの
長年、ノーベル賞候補に挙げられながら、受賞がかなわなかった、
受賞に値する経済学者v
・ロイ・ハロッド
研究分野 経済動学・経済成長論の創始
・森嶋通夫
研究分野 広範な分野における数理経済学上の貢献
■ 【キーワード】
シカゴ学派、ハロッドのナイフ、動学的経済理論
以上